落雷のあとパソコンの電源が入らなくなると、たいていの方が「基板がやられた」と考えます。私もまずそれを疑います。
ただ、疑うことと、決めつけることは違います。
2026年9月に富山市で伺った1台は、落雷のあと電源を入れても反応しませんでした。基板の損傷を疑って中を開け、測っていったところ、壊れているところが1つも見つかりませんでした。部品を1つも交換せずに戻っています。
この記事では、そのとき何を測ったのかと、その数値をそのまま出します。買い替えを決める前に、確かめられることが残っているからです。
富山では、この話は夏だけのものではありません
落雷というと夏の話に思えますが、北陸は冬にも雷が鳴ります。
気象庁は、北陸地方の雷について「夏季に加えて冬季により明瞭なピークがある」とし、「本州の日本海側に特有な季節現象」と説明しています。さらに、冬の雷は積乱雲の高さが3000〜6000メートルと低く、「夏と比較し冬の落雷では、大地へ流れる電流が大きくなることが多い」とされています。海岸から離れるほど少なくなる、とも書かれています。
つまり富山では、雷とパソコンの話は季節を問いません。
電源を入れ直す前に、いったん電源を抜いてください
落雷のあと反応しないとき、多くの方が何度も電源ボタンを押します。気持ちは分かるのですが、通電を繰り返すと状態が悪くなることがあります。
まずコンセントを抜いて、しばらく置いてください。ノートパソコンなら、可能であればバッテリーも外します。それだけで戻ることもありますし、戻らなくても、あとで診断する側にとって条件が良くなります。
異音がする、焦げたにおいがする、水に濡れているときは、電源を入れないでそのままにしてください。
何を測るのか
「見て判断する」のではなく、数字で出せるものを測ります。うちが必ず見るのは、この5つです。
SSD/HDDのデータ破損の有無 — データが読めるかどうかは、修理費用より先に決めたいことです。ここが無事なら、最悪でも中身は助かります。
記憶装置の消耗度と累積使用時間 — SSDには書き込みの上限があります。消耗が進んでいれば、いま直っても近いうちにまた止まります。直すべきか買い替えるべきかの判断は、ここで分かれます。
異常終了の回数 — 落雷のときだけ起きたのか、前から繰り返していたのかが分かります。前からなら、原因は雷ではありません。
温度とファンの回転数 — 負荷をかけて、上がり方を見ます。冷却が効いていないと、直った直後は動いても、夏にまた止まります。
メモリの動作 — 挿し直しただけで直ることもあれば、片方が死んでいることもあります。
実際に測った数値
冒頭の1台の結果です。診断報告書に書いてお渡ししたものと同じ数値です。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| データの破損 | 0件 |
| 予備領域 | 100% |
| 消耗度 | 8% |
| 累積使用時間 | 18,585時間 |
| 異常終了 | 41回 |
| 温度(負荷前→負荷後) | 70.0℃ → 81.2℃(目安95℃) |
| ファン回転数 | 1,091rpm → 1,948rpm |
この数字から言えたことは3つです。
データは無事でした。破損0件、予備領域100%。落雷でいちばん怖いのはここなので、まずこれが分かった時点で話が変わります。
記憶装置はまだ使えます。累積18,585時間は短くありませんが、消耗度8%です。「そろそろ寿命だから買い替え」の根拠にはなりません。
冷却も効いていました。負荷をかけて81.2℃、ファンは1,091から1,948rpmまで上がっています。目安の95℃には届いていません。
起動しなかった原因は、落雷のあとに記憶装置のコントローラが保護のために止まっていたことでした。電気を完全に抜いてやると、そのまま戻りました。基板は焼けていませんでした。
作業は内部の清掃とグリスの塗り直しまで含めて1日で終わり、部品代は0円です。ほかの作業が立て込んでいたため、月曜にお預かりして金曜のお返しになりました。
直らなかったときは、診断料と出張費だけです
測った結果、直せないと分かることもあります。基板が本当に焼けていれば、費用は買い替えと変わらなくなります。
そのときは診断料と出張費だけをいただいて、直りませんでしたとお伝えします。中途半端に部品を替えて様子を見る、はやりません。測って分からなかったことは、部品を替えても分かりません。
診断報告書は、直っても直らなくてもお渡しします。買い替えるにしても、いまのパソコンの何がどうだったのかは、手元に残ります。
買い替える前に、一度測ってみてください
落雷のあとに起動しないパソコンは、開けて測るまで、直るか直らないか誰にも分かりません。それは私も同じです。分からないから測ります。
富山県内であれば伺います。症状を書いて送っていただければ、目安の金額と日数をお返しします。写真があると、より正確にお答えできます。
※記事中の金額と作業内容は、その案件の当時のものです。現在の料金は料金のページをご覧ください。
※北陸の雷についての記述は、気象庁「北陸地方の季節ごとの天候の変化」によります。